40代 2児の父 東京在住のいろいろブログ

いまさらですが、ブログ初めました。備忘録です。

香港の美術館「M+」、常設展が予想外に日本だらけだった件。そして中銀カプセルに感動した話。

ゴールデンウィークの香港旅行、今回の最大の目的はここでした。

M+(エムプラス)。

西九龍にある、2021年開館のアジア最大級の現代アート・デザイン・建築の美術館です。

開館前からずっと気になっていたんですが、コロナ禍で香港になかなか行けず、そのままになっていました。今回、思い切ってリベンジです。

 

そもそもM+ってどんな場所?

規模でいうと、延床面積約6万6,000平方メートル。東京の国立新美術館と比べても遜色ないか、それ以上くらいのスケールです。

香港島からも対岸のランドマークとして見えるくらい、存在感のある建物です。

上から見下ろした吹き抜け。何フロアもあって、下の人が小さく見える

中に入ると、この大きな吹き抜けが最初に目に入ります。「大きい場所に来たな」という感覚を、建物自体が与えてくれる。

 

アクセスが地味にわかりづらかった

地下鉄で行ったんですが、駅を降りてからどこに向かえばいいのかが全然わからない。

最終的に近くのホテルのスタッフに聞いて、ようやくたどり着きました。笑

日本の美術館なら、最寄り駅の構内に大きな案内看板が出ていたりしますよね。M+にはそういった誘導がほとんどなかったので、初めて行く方はご注意を。

 

常設展、最初からインパクトがすごかった

今回の目当ては常設展

入ってすぐのエリアから、なかなかの出迎えを受けます。

同じ顔の男性が、にっこり笑いながら部屋いっぱいに並んでいる。シュールすぎる

毛沢東の顔にマリリンモンローのメイクを施したポップアート。中国の政治とアメリカのポップカルチャーを掛け合わせた作品

パンダを使った社会風刺シリーズが面白かった

パンダのぬいぐるみを見た男性が「これは私のクローン?」「違う、偽物だ!」というやりとり。コピー・偽物への風刺

医者がパンダに注射しながら「使い捨て針だから大丈夫」「怖くない、AIDSが怖い」というやりとり

「私より怖いものは?」「ドラッグだ!」。笑えるようで笑えないシリーズ

ユーモアを使いながら社会問題を刺してくる感じ、さすが香港の美術館だなと思いました。

 

 

香港らしい展示もあった

「香港の自販機で人民元を使おうとしてる、頭おかしいの?」という会話が書かれた絵画。香港と中国本土の複雑な関係がにじみ出てる

林青霞・金城武が描かれたコラージュ作品。香港映画黄金時代へのオマージュ

毛沢東語録が書かれた皿もありました。日用品に政治スローガンが刻まれていた時代の記録として。

「一切は毛主席のために」と書かれたホーロー皿とその原画。当時の中国の日常品がそのまま展示されている

香港のネオンサイン原画アーカイブに感動した

M+には香港のネオンサイン職人が描いた原画が大量に収蔵・展示されています。

香港のネオン、知ってますか?

かつての香港を象徴する、あの無数のネオン看板。実はいま、**どんどん数が減っています。**安全基準の強化や建物の建て替えにより、香港名物だったネオン看板はここ数年で急激に失われてきているんです。

M+はそれを「文化遺産」として収集・保存しています。

職人が実際にネオン制作前に描いた手描きの設計図が、そのまま展示されていました。

 

「味の素(AJI-NO-MOTO)」のネオンサイン原画。日本企業が香港でもネオン広告を出していたんですね

「Golden Girl」ブランドのネオンサイン。縦型の看板デザイン。手描きとは思えない精密さ

 

New Malaya Restaurant。鮮やかなブルーが印象的

酒のブランドのネオンサイン。瓶のイラストまで細かく手描きされている

これが個人的に刺さった。「東Toshiba芝」。日本企業のロゴが、香港のネオン職人によって手描きされていた

これ、実際に見るとじわじわくるものがあります。

なくなっていくものを、「アートとして残す」という判断をM+がした。それがすごく大事なことだと思いました。

ただの懐古趣味じゃなくて、「これは文化として後世に伝えるべきものだ」という意思がある。

香港のネオンは、私の子どもたちが大人になるころにはほぼ消えているかもしれない。でも、こういう形で残っていれば、その時代の香港のことを想像できる。そう思うと、展示の前でしばらく動けなかったです。

 

グラフィックデザインのコーナーも日本が多かった

「モリサワ」の文字が上から下にかけて収束していくデザイン。シンプルなのに力強い

「モリサワ」の文字だけでモナリザを構成したポスター。拡大するとひらがな・カタカナが無数に並んでいる




倉俣史朗の「きよ友」に入れた

「きよ友」という文字の行燈。中に入れます

インテリアデザイナー倉俣史朗が手がけた東京・銀座の寿司店「きよ友」の空間が、まるごとM+に移設・再現されています。

1980年代に建てられた伝説的な空間で、実際の店舗はすでに閉店していますが、M+が取得・保存しているんです。

御影石のカウンター、天井からぶら下がる折り紙のようなライト。寿司カウンターのはずなのに、どこか現代アートのような空間

アーチ状の天井と黒いテーブル。このカーブが美しい

別アングルから。ライトの並びとカウンターのラインが整然としていて、計算された美しさがある

ここに座って寿司食べたかった。笑

 

今回の旅で一番感動した:中銀カプセルタワー

正直に言います。

今回のM+で一番感動したのはここです。

中銀カプセルタワー(黒川紀章設計) のカプセルが、実物で展示されていました。

解体前の中銀カプセルタワー。東京・銀座に2022年まで存在したメタボリズム建築の傑作

カプセル型の住戸を積み上げた、世界的に有名な建築です。

2022年に解体が決まったとき、かなりニュースになりましたよね。解体の際に一部のカプセルが世界各地の美術館に引き取られたんですが、M+もその一室(A806号室)を収蔵しています。

扉を開けると内部が見えます。丸窓、ベッド、コンパクトな造り。当時の「未来の住まい」がそのまま残っている

丸窓を外から覗いた様子。向こうに館内の展示スペースが見える

触れる距離で見られた。

これがもう、信じられなかった。

写真や映像でしか知らなかったものが、目の前にある。手を伸ばせば届く距離に、本物のカプセルがある。

実物を前にすると、その圧倒的な「密度」みたいなものが伝わってくるんですよね。たった一室なのに、情報量がすごい。1970年代の日本人がどんな未来を思い描いていたか、その熱量がカプセルの中に詰まっている感じがしました。

ここだけで30分くらいいたと思います。

 

 

戦後日本デザイン史のコーナーも見応えがあった

亀倉雄策デザインの1964年東京オリンピック公式ポスター。今見てもかっこいい

このポスター、本物が香港にあるというのが、なんとも不思議な感じがしました。

隣にはソウル1988オリンピックのポスター原案も並んでいて、アジアのデザイン史が一気に俯瞰できる展示になっています。

中村誠デザインの資生堂ポスター。製品名がびっしり並ぶあの独特のレイアウト

上:亀倉雄策デザインのニコン広告。カラーバーを使った抽象的な構成。下:資生堂

戦前の対外宣伝誌「NIPPON」。当時の国際向けグラフィックデザインの最高峰とも言われる

PARCOの広告「凜として女」。80年代の空気そのままの、あの独特のセンス

これだけのものが香港の美術館に並んでいるのを見ていると、「日本のデザインは、アジア規模で見ても本当にすごかったんだな」と改めて気づかされます。

 

 

おわりに

ぶっちゃけ、ここまで日本関連の展示が充実しているとは思っていなかったです。

良い意味で裏切られました。

常設展だけで2時間近くいましたが、それでも全部見きれなかった。子どもたちの集中力が切れたところで撤収したので、正直もっといたかった。笑

特に中銀カプセルタワーとネオンサイン原画のアーカイブは、ここでしか体験できないものだと思います。

香港に行く機会がある方は、ぜひM+を旅程に入れてみてください。半日は確実に必要です。

次回は企画展の期間を狙って、また来ます。